The Great Escape

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獲得ゼロ ~冬の移籍市場を振り返る~

今冬の移籍市場もクローズいたしました。毎年、夏と冬に移籍期間があるわけなんですが、その最終日は色んなドラマが巻き起こる狂乱の一日で現地は大騒ぎ。SSN(スカイ・スポーツ・ニュース)では特番が組まれて、それこそ朝から晩まで一日中ぶっ続けで放送してたりします。私はこの移籍市場最終日がとにかく大好物でして、もう5~6年ぐらいになるのかな?毎年2回の「お祭り」を徹夜で見守るのがお約束となっております。最終日を徹夜で楽しみたいが故に、その次の日が平日だったりすると休みを取るぐらいの念の入れようで(笑)この日に備えていたりします。

年々、移籍期間のワクワク感というか、楽しさが薄れてきてはいて、以前ほどには移籍期間中に流れる噂、憶測、ゴシップの類に一喜一憂することは無くなったのだけれども、最終日となると話は別。特にスパーズはこの最終日に数々の驚きのニュースを提供してくれる(近いところではファンデルファールトの電撃加入だったり、ベルバトフの移籍などなど)ので目が離せません。もはや移籍市場最終日のSSNはスカイ・スパーズ・ニュースと言っても過言では無いぐらいの主役ぶりを発揮します。もうね、スパーズが動かないと成り立たないんじゃないか?とすら思えるぐらいでね。
この最終日こそ、スパーズの補強の面白さ、醍醐味が詰まってるので、まだ経験していないという方はオヌヌメです。

で、今回の最終日。ある程度は予想はしてたんだけども、スパーズはかなりおとなしく、無風&無風。特にスパーズの話題が持ち上がることもなく、淡々と時間が過ぎていきまして。結局、獲得はゼロ。数人の放出のみに留まりました。
ここまでスパーズが動かなかった(いや、水面下では動いていたのかもしれないが)最終日は記憶に無いです。

2013/14 スパーズの冬の補強動向

放出
サイモン・ドーキンス→ダービー
アダム・スミス→ボーンマス
ジャーメイン・デフォー→トロント(2月末)

ローン放出
ジャック・コールサースト→レイトン・オリエント
ジョン・オビカ→ブライトン
ライアン・フレデリクス→ミルウォール
ルイス・ホルトビー→フルアム

獲得
無し


今夏にベイルを放出して7人の新戦力を加入させるという大型補強を断行したスパーズ。現時点で、戦力として計算出来るか、というのはともかくとして、人数は揃っている。この”人数は揃ってる”というところが厄介で、数はいるけど、質がイマイチ、適正ポジションがカブり気味でやや歪なメンバー構成の是正。ここが重要課題かと個人的に考えていました。それらを踏まえて、この冬の移籍市場においてのキーワードを挙げると以下のとおり。

1.余剰となっているポジションの人員整理
2.出場機会を必要とする若手のローン先の確保
3.戦力強化が必要なポジション(左SB、ストライカー)の補強


上に示した今冬の補強の結果を見ても明らかなように、1と2に関してはある程度、成功したと言えるんじゃないかと思います。1についてはセントラルMFの人員が溢れており、4-4-2を用いることが多いシャーウッド体制に移行後は特にそのアンバランス感が目立ったポジション。放出の噂が主だったのもここのポジションで、ホルトビー、カプーが候補に挙がったものの結果的にはホルトビーをフルアムにローンで出すことで決着。個人的には好きな選手の一人なので、残念な気持ちはあるものの、チーム事情を考えれば仕方ない部分はあるので、ほぼほぼ納得出来るところです。
おそらくはカプーも良いオファーがあれば放出してたと思いますが、最終的に折り合わなかったのでしょうね。
2についても、ここ最近のスパーズのアカデミーっ子の成長は著しく、有望な若手が多いようなので、そのローンアレンジは重要課題。ローン移籍による武者修行で経験を積んで戻ってくるのを願うばかりです。

問題は3です。獲得に関してはゼロ。これには驚きました。と同時に、なぜここに手を付けなかったのか大いに疑問を持ちました。まず、左SB。現在はローズがレギュラー。サブにノートン(本職右SB)、フライヤーズ。場合によっては本職CBのヴェルトンゲンをコンバートという手はあるが、明らかに薄いポジション。私はかねてよりローズの左SBとしての資質に懐疑的な一人で(勿論、活躍して欲しいという期待はあるが…)彼は残念ながらSBでは大成しないと見てます。今季も度々顔を覗かせる対人守備での軽さ、ポジショニングの拙さは致命的で、安心して任せられるレベルには無い。ベイルのように我慢して使い続け、後に化ける可能性も無くはないが、望みはかなり薄いんじゃないかな。
一列前でタウンゼントと勝負させてどうなるか?というところでしょう。ここは補強するべきポジションでした。
ローン移籍中のエコトを戻せばいいのに!と声を大にして言いたいです(笑)まあ、そもそも無理難題でしょうがね。

また、ストライカー。ここについてはベルバトフのローン獲得を目指していたようで、実際にかなり近いところまで行っていたであろう感触はありましたが、結局はモナコに持って行かれました。他のターゲットに切り替えるも時既に遅しといったところでしょうかね。インスら国内有望株の噂もありましたが、実現はせず。ベルバトフ復帰を熱望していただけに残念ですね。こちらとしては勝手にもう来るもんだと半ば身構えてたので(笑)肩透かし感が半端ない。
デフォーを放出することが決まっているにも関わらず補強はなし。これは如何なものか。ソルダード、アデバヨールの2人だけ(ケインは現状では計算出来るレベルには無い)で乗り切るのはリスクが高いように思えるのだが…。

獲れなかったのか、獲らなかったのか

ここである一つの疑問が浮かびます。この冬の獲得ゼロが示すもの。これは、積極的に補強に動いた末に逃したのでは無く、何らかの意図が働いて積極的には動かなかったのでは無いか?ということです。シャーウッドは以前より余剰人員の整理を匂わせてはいたものの、獲得に関しては消極的な姿勢を示していました。『怪我人が復帰すれば、十分に戦う戦力が揃っている』と。これは前述した通り、”人数は揃っている”現在のスカッドを考えれば、理解は出来るし、そう考えても不思議では無い。育成で携わったベンタレブの抜擢の例もあり、補強よりも現有戦力の底上げに自信を持っているであろうことも端々から窺える。無論、純粋にレヴィ会長や補強を担当するSDのバルディーニが監督のシャーウッドと考えを同じくしていたというのであれば何も問題はない。本来、補強というのは会長やSDが独断で行うものでは無く、監督との密接したコミュニケーションの元で、足並みを揃えたうえで行われるべきものだからだ。

ただ、本当にそうだろうか?私にはどうしても”見えざる手”が働いたのでは無かろうかという疑念が消せない。
シャーウッドはあくまで今季終了までの暫定、今季末の時点で監督人事は一度白紙に戻して検討というのが本当のところで、結局は交代というのが実は既定路線なのではないか。その為に今冬の補強を渋ったのでは無いか?と。
新しい監督が来るのならば、そこで戦力の見直し、再編成は確実。動くべきは今ではなく、来るべき夏だ、と。
勿論、これは憶測だ。それでも、私にはどうもそうしたフロントの思惑が見え隠れしているように思えて仕方ない。
本当の意味でシャーウッドがレヴィ会長の信頼を勝ち得てるのか。いや、信頼はされているだろう。ただ、それはトップチームの監督に求めるそれでは無いのではないか。あまりに突発的だったAVBの解任、そして代替候補が不在の中でのシャーウッドの内部昇格。就任時から何となく感じる”違和感”が、この冬の獲得ゼロという形で、より鮮明に浮き彫りになった、と捉えるのは考え過ぎなのだろうか。それがただの杞憂に終われば良いのだけれど…。

いずれにしても、移籍市場はクローズした。残りの半年、現在のスカッドで戦うことが決まった。
補強が無かった左SBはローズが、FWはアデバヨールとソルダードの奮闘が求められる。そして何より、チーム一丸となって乗り切っていく必要がある。夏に何が起こるかはわからない。でも、そんな心配はその時にすればいい。
今はただシャーウッドと現在のチームを信じようと思う。上位は混戦だ。正直、CL権獲得は相当に困難なミッション。
それでも、可能性がある限りは喰らいついて欲しい。ELだって、まだトリノへの道のりが残っている。
『色々言ったけど、この冬の獲得ゼロは失敗じゃなかった』今季終了時に、そう笑って言えてたら最高だ。


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デフォー放出が間違いである3つの理由

先日、ジャーメイン・デフォーのMLSトロントFCへの移籍が正式に発表された。2004年にウエストハムからスパーズに加入して以降、177試合出場、64ゴール。2008年1月に一度はポーツマスに移籍したものの、1年後にスパーズに再加入。その後は185試合出場、78ゴールを記録。クラブ歴代のゴールランキングでも5位となる数字を積み上げた偉大なストライカーであり、長くスパーズを支え続けた功労者がまた一人クラブを去ることとなる。個人的にも好きな選手の一人であり、その在籍期間の長さも相まって、思い入れも深い”野獣”デフォーの移籍は残念だし、寂しい。

最初に断っておく。この移籍に関して、クラブの決断は概ね正しい。まず31歳という年齢。今後、市場価値は下がることはあっても上がることは考えにくい。残り契約期間を踏まえ、契約更新と移籍金が発生するこのタイミングでの放出を天秤にかけて後者を選択する判断は妥当とも思える。また、ビジネス面でも悪い話では無い。今回のデフォー移籍に伴って、トロントFCのクラブオーナーであるメイプルリーフ・スポーツ&エンターテイメント(MLSE)社との広告権の合意も発表されている。トッテナムの北米市場におけるプロモーションなど多岐に渡ってのメリットは図り知れず、今夏のプレシーズンツアーにおける対戦も決まっていると聞く。いかにもレヴィ会長らしい、抜け目のない取引だ。

それでも、デフォーの放出は現状のスパーズにとっては大きな損失だ、と個人的には思う。以下に3つの理由を示す。

1.ストライカーの不足

主に1トップを採用していたAVBが去り、現在チームを率いるシャーウッドが主に用いているのは前線に2人のストライカーを配置する4-4-2。現在のスパーズのFW陣を見渡すと、前任には完全に干されいてたアデバヨールと思うように結果がついてこないが継続して起用される中で光明が見い出せつつあるソルダード、そしてデフォーである。1トップであれば十分な陣容であるが、2トップとなれば話は別だ。もし仮にアデバヨールかソルダードいずれか一人を欠く状況となった時に、前述の2人と同等、或いはそれ以上の実績を持つデフォーがいない状態というのは非常に心許ない。
ケインがいる?残念ながら現状では先発で起用するには大いなるギャンブルと言わざるを得ない。ラメラやシャドリを1.5列目に起用?そもそもフィットしていない現状では計算が出来ず、そもそもシャーウッドにそういったオプションがあるのか(トップ下での起用を示唆する発言もあったようだが…)も疑わしい。この冬の移籍市場でのストライカー獲得が急務であるのは自明だが、チームに加入後、即フィットして大活躍!となる程に、プレミアリーグは甘くない。

2.流れを変えるスーパーサブの重要性

上の理由とやや重複する部分もあるが、ベンチに得点力があり一発で拮抗した流れを手繰り寄せる事が可能なデフォーが控えている、という状況が現在のスパーズにとっては大きい。アデバヨールはポストプレー、テクニック、得点力とどれもに秀でている万能型のストライカーであるがメンタルコントロールに難があり、コンスタントに結果が出せるタイプではない。ソルダードは未だ本来の能力をいかんなく発揮しているとは言えず、プレミアリーグに順応出来ずにもがいている最中だ。スパーズの中盤は今夏の大型補強もあり多士済済だが、ゲームの途中から入り流れを変えられるような資質を持つ選手が少ない。パウリーニョは言わずもがな、カプー、エリクセン、シャドリ、ラメラも同様だ。ホルトビー、シグルズソンはタイプ的に面白いカードになり得る存在だが、デフォーへの期待感と比べればやや劣る。

3.英国系中心というアイデンティティーの喪失

昨今のイングランド人選手の度重なる放出と、獲得選手の多国籍化で『もはや現在のスパーズにそんなものは無い』という声が聞こえてきそうだが(笑)待って欲しい。2000年台中盤からスパーズには国内の有望な若手を集めて、育てて戦力とし、チームの中心に据えるという、ともすればユニークな戦略が確かに存在したのだ。今回、移籍が決定したデフォーは勿論、現在のチームの主軸を担うドーソンにレノン。既にクラブを去ってはいるがかつてはキャリック、ジーナス、ハドルストン、ロビンソンらイングランドの代表主力級がズラリ。勿論、ハズレも多かったわけだが…(笑)
私は基本的に一度スパーズのユニフォームに袖を通し、クラブの為に戦ってくれているならばどこの国籍だろうが問わないという考えだが、やはりスパーズはイングランドのリーグで、ロンドンに本拠を置くクラブ。それに加えて、前述の通り、英国系を中核に据えてきた独自のアイデンティティー。そして、自分自身はそんなクラブを好きになったという経緯もあるので、やはりチームの中核は英国系の選手が担っていて欲しいという願いは常に持っている。
リバプールにはジェラードが、チェルシーにはランパードやテリーが、マンUtdにはルーニーやリオがいるように。
デフォーが去ることでまた一人スパーズのイングランド人が減ってしまう。これがまた、なんとも寂しい事実である。

決まってしまったものをいつまでも嘆いていてもしかたない。それはわかっている。チームは生き物だし、移り変わっていくものだ。デフォー本人も今回の移籍を前向きに捉えている。「環境を変えるべき時が来た」と。立ち止まり、取り残された気持ちに陥ってるのは僕らだけなのかもしれない。それでも、今回のデフォーの移籍決定には一抹の寂しさが拭えない、というのが偽らざる本音だ。スパーズで躍動するデフォーを、もっともっと見ていたかった。
だが、しかし、デフォーの正式な旅立ちは2月末。まだ1ヶ月以上ある。それまでは堪能しようじゃないか。決して定位置が約束されていたわけではなく、常に過酷な競争にさらされ、その度に強くなった小さなストライカーの勇姿を。
エゴイスティックなまでに貪欲に、そして果敢に、ゴールへと一直線に向かう、生粋の点取り屋の生き様を。


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